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第2回 「タイヤ編(1) 〜空を飛んでちゃ曲がらない!?〜 <2004年4月15日>

もし、クルマが空を飛んでいたら、
ブレーキを踏んでもクルマは止まらない。
アクセルを踏んでも加速しない。
ハンドルを切っても曲がらないのは、みんなも知ってると思う。(あたり前か・・・)

要するに、クルマが、止まる、走る、曲がるという性能を発揮できるのは、
タイヤが路面に接地していて、そこに摩擦があるからこそ。


バネやダンパー、スタビ、ウイングなどのパーツはこの摩擦を有効に使うためにあるのです。
クルマを速く安全に走らせたかったら、この接地面の摩擦(グリップ)を有効に使うことがすべてといっても過言ではないのです。モータースポーツなどは、まさにこのタイヤのグリップをどれだけギリギリまで使うかが勝負を左右します。
要するに、クルマの運転は、足し算や掛算じゃなく、タイヤの持つグリップからの引算なんです。
だから、どんなに優秀なレーシングドライバーでもこの摩擦の限界を超えたまま、クルマをコントロールすることは不可能なのです。

では、この摩擦(グリップ)をコントロールするための基礎の基礎となるタイヤの話から入りましょう。

タイヤでグリップを上げる場合、3つの考え方ができます。
(1) 路面とタイヤの接地面積を上げる。
(2) 路面とタイヤの
摩擦係数を上げる。
(3) 路面とタイヤの
摩擦圧を上げる。

まずは(1)の接地面積を上げるには、いろいろなやり方があります。

ワイドタイヤ
ワイド(幅広タイヤ)に交換すると、左右の接地幅が大きくなり、タイヤ全体の接地面積が上がります。225のタイヤを245に交換しただけでカンタンにグリップアップするでしょう?
大径タイヤ
スピードメーターやフェンダークリアランスに問題があるかもしれないけれど、タイヤの外径を上げるとタテ(タイヤの前後方向)の接地幅が大きくなります。(右図参照)
レーシングタイヤの場合、幅に対する規制があるもんだから、年々、大径化させてタテの接地幅をかせいでいますよ。このタテの接地面積が上がると、ブレーキとトラクションがスゴク良くなります。
溝が少ないトレッドパターン
トレッドパターンも接地面積を左右します。
同じサイズでもブロック部分と溝の部分の割合で接地面積が違うでしょ。
Sタイヤなんてほとんどがブロック部分だもんね。おまけにブロックが大きいと、コーナリング中にブロックの“ヨレ”をあまり感じず、スプリングを固めたようにダイレクトなステアリングフィールになります。でも、走行音と排水性にはちょっと問題ありです。
プロファイル
これは、タイヤの形状のこと。
特にトレッド面の形状が問題で、わかりやすく言うと四角いタイヤと丸いタイヤかな。トレッド面が完全に直線のタイヤってないでしょう?サイド近辺はラウンドしているとでもいうか。
だからトレッド面が直線に近い方がヨコの接地面積が上がるわけです。でも、タイヤはコーナリング中に変形するので、あまり直線的だとタイヤの外あたりが激しくなり、グリップが安定しないので、少なからずラウンドさせてあるのです。
同じサイズのちがう銘柄のタイヤに変えたら、今まであたらなかったフェンダーをゴリゴリやっちゃうことってあるでしょう?これはまさに、プロファイルのちがいです。

次に、(2)の摩擦係数を上げるには

ソフトコンパウンド
ハイグリップラジアルやSタイヤなんかがそうですよね。ゴム自身をソフトにして“トリモチ”のようにベタベタさせて摩擦係数を上げるのです。
タイヤ温度
タイヤ温度を上昇させると、同じゴムでもどんどんソフトになります。
レースで“タイヤがまだ温まっていない”とかいってるでしょう。あれは、設定温度にならないと本来のグリップがでないということで、これはストリートでも同じ。
冬の寒い日の走りはじめと、夏のスポーツ走行の後では、同じタイヤでも大きくグリップはちがうはずです。

そして(3)は、ドラテクの王道、荷重によるグリップです。
上から、押さえつけること(荷重をかける)によって、タイヤはどんどんグリップします。
反対に、荷重を抜くとタイヤはどんどんグリップしなくなるのです。コーナリングやブレーキに対して4本のタイヤに必要なグリップを必要なタイヤだけにドライバーが振り分けられる“魔法のグリップ”です。
荷重の話は、今後バッチリとやりますので、乞うご期待!

タイヤと路面の摩擦は、ドライビングのすべてを支配しています。
この摩擦の力の大きさを感じ取れるか、取れないか。または、自分で作れるか、作れないかがドラテクの真髄だと、田中は思います。

次回は、4月24日予定です。
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