今回は、またまた開発秘話です。
リニアステア−の開発に没頭し、毎日がパワステのことで頭がイッパイのある日、
某レーシングチームのメカニックから電話がありました。
「あっ、ミノルさん? じつは、○○レーシングチームを辞めたんだけど、なんか仕事ない?」
「辞めたっていっても、あんた、20年もやってて、レーシングメカニック以外なんにもできないでしょう?」
という会話があり、数日後、会社を訪ねてきたのです。
そして、私はお昼の“みのもんた”にのように、ああだこうだと話を聞くハメになったのです。
で、その時ひらめいたのでした。何がって、パワステのタンクですよ!!
リニアステア−の開発中、あまりにもズサンな作りの純正パワステタンクに気泡を取る機能さえあればと
思ってはいたのですが、サンプルを製作する時間もなく、後まわしになっていたのを思い出したのです。
そう、レーシングメカニックといえば、ワンオフでなんでも製作する天才!
これは渡りに船だということになり、さっそく、田中の泡取りのアイデアを話し、図面作製と相成りました。
やはり、職を失った?レーシングメカニックのレスポンスは速く、あっという間に図面が上がり、
削り物はレース界きっての精密さを誇る、通称“スーパー御殿場工場”にお願いしました。
この工場の社長は、TOM‘Sで10年以上チーフメカニックを努めた凄腕。
おまけに、NC旋盤(どんな削り物でも作れちゃう高価な旋盤)と会話ができるらしく、図面がなくても、
こちらが“こんな形”と口頭で説明するだけで、CADも使わず、数字をパチパチと直接入力し、
完全ハンドメイドのようにNC旋盤を操るのです。また、たとえこちらの図面にチョンボがあっても、
ちゃんとなおってるし、時には、勝手に形状変更まで入れられて、
“この方がいいだろう”とあとで怒られてしまうような、NC旋盤を操る人間国宝のような人なのです。
(パーソナリティーも強烈な人なので、こんど、レーシーな人々で暴露します。ホント強烈です。)
で、アルミ溶接は、やっぱ△△さんがウマイからとか、パイプのヒモ出しは××さんの工場に機械があるからとか、
気がつけば、超有名レーシングチーム4社によるコラボで第一次サンプルが仕上がったのです(豪華でしょう)。
まあ、シーズンオフだったから可能だったんでしょうが。
パワステタンクの仕様は、こうでした。
まず、樹脂製より、放熱効果に優れ、見た目もキレイなアルミ製。
そして、タンクを二重構造にして、外側タンクと、内側タンクに分けます。
パワステから、戻ってきた気泡の混じったフルードは、外側のタンクで渦を巻かせる構造として、
遠心力によりフルードと気泡の重量の違いで、分離させようという企みです。
外側タンクでフルードと気泡を分離できれば、フルードのみを内側のタンクに導くことが出来るので、
急激にポンプからの吸い込みがあってもエアーは混入しないのです。エアーさえ混入しなければ、
圧力伝達がバッチリ行われますので、パワステフィール格段に良くなり、走行中のフルードの噴き出しも
STOPできるという、まさに一石二鳥!のアイデアなのです。
おまけに、外側のタンクでフルードがグルグル回っている間に冷却もできるから、一石三鳥!?
いやいや、ルックスも良くなるので、一石四鳥!??(もういいか・・・)
という、アイデア満載の商品なのです。
しかし、レーシングネットワークは、本当にスゴイ! と、改めて感心させられました。
ある一点を除いてはね・・・・・・・。
さあ、次回は、リニアステアー & レーシングPSタンクの開発秘話、最終回です。
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