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第29回 「タテとヨコグリップの法則」<実用編B> <2006年1月23日>
さあ、いよいよ2006年のドラテクも今回からスタートです。
みなさん、今年も、どーぞよろしくお願いします!

そういえば、先週末は、関東地方でも、ドカッと雪が降り、またまた寒くなりましたね〜。
でも、グリップの限界が低い雪道は、ドラテクを理解するには、まさにうってつけです。
もちろん、タテとヨコのグリップの関係も、よりわかりやすい状況になりますので、安全な場所がある人は、ぜひ、試してみてください。


さて、今回は、タテとヨコ グリップの法則をマスターするために、頭の中で理解したことと、実際の操作とのあいだに存在するギャップの埋め方の話です。

人間には、自己防衛本能というものが存在します。
簡単に言うと、限界近辺になると、“怖い”と思う本能のことです。

たとえば、100km/hなら、な〜んともないコーナーでも、120km/hで進入すると、怖くなることってありますよね? これが、自己防衛本能です。
そして、この本能があるから、自分で自分の身を守れるわけです。

しかし、問題は、

コーナリングの限界 = 怖いと思う瞬間


ではなく、必ず限界より前に“怖いと思う瞬間”は、やってきます。
このタイミングは、人により個人差があります。
ごくまれに、限界に達しても、“怖いと”感じない人もいますが、このタイプの人は、モータースポーツやスポーツドライビングには、不向きですね。だって、いくら命がたくさんあっても足りなくなってしまいますから・・・・・・・・。
また、限界のはるか手前で、“怖いと思う瞬間”がやってくる人は、“チキン”とか“根性なし”なんて呼ばれる場合がありますが、限界との付き合い方が理解できれば、なんら問題ありません。反対に、“怖いと”感じない人のほうが、大問題です。

では、実際にコーナリングを通じて、話をしましょう。
前回のコラムで、思い切って飛び込んだときに、ブレーキをどんどん緩めていくのは、難しいって話しましたよね?
それは、ドライバーが“速い!”と思ってしまうからだとも話しました。
これぞまさに、自己防衛本能です。
頭の中では、ブレーキをどんどん緩めないと、タイヤがヨコ方向に使えないことはわかっていても、スピードの恐怖から、なかなかブレーキが緩まないといった状況です。

でも、こんな場合でも、確実にブレーキが緩む方法があるのです。
もちろん、“根性で緩めろ!”なんて暴力的なことは言いません。
私が考える、恐怖を乗り越える方法には、根性や、恐怖と戦う特別な精神力などまったく必要としません。必要なのは、発想の転換。ただそれだけです。

ブレーキを緩める方法は、いたってシンプル。
恐怖と戦うのではなく、恐怖を取り除けば良いのです。
スピードをもってコーナーに入ったとき、“速い!”と感じるのは、
クリッピングポイントまでに減速を終了させなければいけない。
↓↓↓
しかし、今のスピードなら減速が終了しないかもしれない。
↓↓↓
感覚的に現在のスピードが速いと感じる。
↓↓↓
ブレーキが緩められない。
といった、状況からきていると思われます。
そこで、発想を変えて、クリッピングポイントを“奥” に移動させてしまうのです。
“奥”といっても、コーナーインサイド出口側の上図のA地点ではなく、進入時に見えるクリッピングポイントをそのまま直線的にコースの中央付近まで延長させた、B地点まで移動させるのです。

そうすると、あら不思議!!!
減速区間が長くなったことから、“速い!”と感じる恐怖が消えて、ブレーキも簡単に緩めることができるのです。
そして、ポイントはここからです。
架空のクリッピングポイントを目指してコーナーに飛び込むと、 上図のB地点まで続くと思われた、減速は、きっと正規のクリッピングポイント周辺で終了するはずです。
じつは、この距離の差が、自己防衛本能の正体なのです。

当然、一発で正規のクリッピングポイントに来なくても、架空のクリッピングポイントを微調節して、進入スピードを微妙に変えていけば、必ずピッタリと、正規のクリッピングポイントに収まるようになります。

また、万が一、オーバースピードで飛び込んだ場合でも、B地点の先で、多少“オットット〜”とはなりますが、何とかコース上には残っていられるはずです。

どーでしょう?
理解してもらえましたか??
クルマの運転は、恐怖と戦うとリスクが発生します。
おまけに、恐怖と戦っているときは、感性が薄れ、動作も的確に行われませんので、マイナス部分しかありません。

だから、恐怖と戦うのではなく、恐怖を取り除くといった方法で、実際のタイヤやクルマの限界とのギャップを埋めてくださいね。

今回で、「タテとヨコ グリップの法則シリーズ」は終了です。
次回は、パニック状態からの脱出の話をしたいと思います。
ではでは。
次回は、2月15日のアップ予定です。
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