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   <2006年8月10日>
第36回
        「足回りのセットアップ」 <車高編 A>

お暑うございます。
さて、今回は、車高を利用した、セットアップ方法の話です。

もちろん、みなさんはアンダーステア/オーバーステアといった言葉の意味は知ってますよね。そう、コーナーでハンドルを切っているのに、どんどん外側に膨らんでしまうのが、アンダーステアで、反対にハンドルを切ると、リアが滑って内側に巻き込むのがオーバーステアです。

Rd5 SUGOにて
また、このアンダーステア/オーバーステアというのは、コーナーの入口(減速区間)で出る場合と、出口(加速区間)で出る場合があります。全部で合計4つのバランスがあるということです。

@ 入口のアンダーステア
コーナーのインに向けて、ハンドルを切っていくときに発生するアンダーステアです。
本来、ブレーキングとともにフロント荷重になるので、ハンドルは多少重くなるのですが、このアンダーステアが出るときは、ハンドルが重くならず、どんどんクルマが外に膨らんでいってしまいます。


A 出口のアンダーステア
クリッピングポイントを過ぎ、加速体勢に入ってから発生するアンダーステアです。
特徴としては、アンダーステアが出てから、一瞬アクセルを全閉にして、再び踏み込むと、滑っていたフロントタイヤのグリップが回復し、また曲がりだします。別名、パワーアンダー。


B 入口のオーバーステア
コーナーのインに向けて、ハンドルを切っていくときに発生するオーバーステアです。
このとき、ハンドルは急激に重くなり、ブレーキングの段階から、リアがチョロチョロと動きます。また、ハンドルの舵角に対して、リアがピーキーに反応し、安定感がありません。


C 出口のオーバーステア
コーナー出口で、加速体勢に入ってからトラクションにより発生するオーバーステアです。
この症状は、FRやミッドシップのクルマに発生し、別名パワーオーバーと呼ばれています。
また、すべてのオーバーステアは、アンダーステアより唐突に発生します。


要するに、どの状況でも、フロントタイヤのグリップが、リアタイヤのグリップに負けている状況がアンダーステアと呼ばれ、リアタイヤのグリップが、フロントタイヤのグリップに負けている状況がオーバーステアと呼ばれるのです。
もちろん、この割合がちょうどバランスした状況が、ニュートラルステアです。

さて、本題に入りますが、これらの状況を車高でバランスさせることができるのです。
たとえば、@の状況なら、迷わずフロントの車高を下げるか、リアの車高を上げます。変化させる量は、アンダーステアの大きさにもよりますが、3〜5mm単位が良いと思います。また、フェンダーとのクリアランスが確保できるのであれば、フロントの車高を下げた方が効果は大きいでしょう。

クルマのバランスがAの状況でも、同じようにフロントの車高を下げるか、リアの車高を上げます。ほとんどの場合、@のアンダーステアが出ていて、クリッピングポイントまでにクルマの向きが変わっていないのに、アクセルを踏んで、リア荷重にするため、Aのような状況が発生するからです。もし、リアの沈み込み量が多すぎて、フロントが浮き上がってしまうような場合は、リアの車高を上げる方のチョイスとなります。

次に、Bの状況なら、フロントの車高を上げるか、リアの車高を下げます。ハンドルがかなり重くなっていて、リアがピーキーに感じるなら、フロントの車高を上げた方がクルマは、よりマイルドになります。

そして、最後にCの状況ですが、この状況には2種類のパターンがあります。
まずは、クリッピングポイントまでにクルマの向きがバッチリ変わっている状況から、トラクションでリアが出るパターン。このパターンなら、リアの車高を下げます。もし、フェンダー等クリアランスの問題でリアが下げられない場合は、フロントの車高を上げてもOKです。

もうひとつのパターンは、入口は@の状況で、出口でも向きが変わっていないのに、アクセルを踏んでいくと、唐突に出るオーバーステアがあります。業界用語でスナップオーバーと呼ばれるオーバーステアで、サーキットでは、出口の縁石付近で発生します。
これは、もともとの原因は、アンダーステアですので、フロントの車高を下げるか、リアの車高を上げることが正しい選択なのです。
基本的にアンダーステアより、オーバーステアの方が、強烈に記憶に残りますが、ここで、オーバーステア対策を行うと、セットアップは間違えた方向に進みますので、ご注意を!

いかがでしたか?
車高によるセットアップ。要するに、アンダーならクルマの前後傾斜を前傾に、オーバーなら後ろ下がりにすることで、コーナリング中の荷重が変化し、症状を緩和することができるのです。このことは、レーシングカーの場合でも、まったく同じで、車高によるアンダー/オーバーのセットアップは、基本中の基本。GTでも、微妙なバランス取りは、ほとんど車高で行いますので、ぜひ参考にしてくださいね。

<車高によるセッティングのまとめ>
 アンダーステアの時は・・・
   フロント側の車高を下げる or リア側の車高を上げて クルマを前傾姿勢

 オーバーステアの時は・・・
   フロント側の車高を上げる or リア側の車高を下げて クルマを後ろ下がり



では、次回からは、ダンパーのお話しをしましょう。
次回は、9月10日のアップ予定です。
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