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   <2006年10月15日>
第38回
        「足回りのセットアップ」 <ダンパー編 A>

こんにちは。
スーパーGT第7戦IN茂木は、タイヤ無交換という奇策により、執念でポイントを取ってきましたよ。
しかし、ミシュランはスゴイ! 
だって、9月の茂木で300Kmが無交換で走れてしまうのですから・・・・・。
次は、今週末のオートポリス。エンジンも、新仕様になったし、何だか追い風が吹きそうな気がする・・・・・。

ミシュランタイヤはスゴイ!!
さて、今回はダンパーの続きです。

前回、話したように、現在レーシングカーのダンパーは、かなり減衰が弱い仕様となっています。どれぐらい弱いかって言うと、こっそり白状しちゃいますが、もし、セットアップ中に、ダンパーが1本抜けていた(壊れて油圧がかからない状態)としても、それを的確にコメントできるレーシングドライバーは、極々少数というか、ほとんどいないかも・・・・・・・。

"なんだ、レーシングドライバーって鈍感なんだー"、って言われそうですが、でもこれは事実です。一昔前なら、ほぼ100%のレーシングドライバーが、"ダンパー抜けてるよ"って即座にコメントしていました。しかし、ここ数年でダンパーの減衰力が大幅に下がったことから、ダンパーが抜けた瞬間に、即座にコメントするのは、かなり難しくなってきたのです。

現在、主流のダンパーは、できる限り、ダンパーによるバネ成分(ツッパリ感)を取り除いたタイプがほとんどです。なぜなら、荷重の変化や、コーナリング時に必要なクルマを支える力は、スプリングだけに仕事をさせた方が、よりタイヤを有効に使えることがわかったからです。


では、今回は減衰力の調整についても、ちょこっと話しておきましょう。
まず、ダンパーの減衰力調整を利用して、"ロール量"を変えてしまおうとする間違ったセッティングのパターンです。

「ちょっと最終コーナーでリアのロールが大きすぎるので、リアの減衰を上げる」なんて、よく聞く話ですよね。
これの何が間違いかって?
もし、スプリングのレートではなく、ダンパーの減衰で、"ロール量"を変えてしまうと・・・・・、

@ ダンパーは、ストロークするスピードによって、減衰(バネ成分)が変化する。
A ダンパー内に注入されているオイルの温度により、減衰(バネ成分)が変化する。

といった理由で、不都合が発生します。

@の場合、ダンパーはストロークするスピードが速いと、大きな減衰力が発生しますので、
カンタンに言うと、ハイスピードコーナー、ロースピードコーナー、ギャップの有無など、コーナーの種類によってバネレートが違ってきます。
また、ひとつのコーナーでも、コーナリング中に、ダンパーのストロークスピードは変化しますので、場所によりバネレートが変化し、"ロール量"も変わってしまいます。

Aの場合、ダンパーは、ダンパーオイルの温度が高くなると、減衰が弱くなりますので、最初の数周と後半の数周で、バネレートが変化し"ロール量"が変わることが最大の問題点です。

要するに、リアの"ロール量"が多いならば、"ロール量"を決めるスプリングのレートを上げるべきで、これをダンパーで行うと、変化してしまう要素があまりにも多すぎるというのが、最大のデメリットです。
スプリングのレートなら、どこのコーナーでも、コーナーのどの部分でも、すべてにおいて一定の硬さが加わるだけなので、セットアップもシンプルで、ドライバーも動きを把握しやすいはずです。それを、ダンパーでやってしまうと、セッティングもドライビングも複雑になるだけなのです。

ダンパーの減衰で、セットアップするのは、"ロール量"ではなく、"ロールスピード"です。
最大の"ロール量"は同じでも、もう少しコーナーの奥までいってからロールさせたり、入口で一気にロールさせて、外側のタイヤに十分な荷重をかけたまま、コーナーに入るといったことをセットアップできるのです。
もちろん、リバンプ側も同等で、コーナー進入で作った前荷重を長く継続したいとか、アクセルONで、もう少しゆっくりフロントを持ち上げたい、といった部分のセッティングができるのです。

いかがでしたか?
次回は、ダンパー編の最終回です。
次回は、11月15日のアップ予定です。
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