タイヤテストって何?
レースが好きな人は、一度ぐらいタイヤテストって言葉を聞いたことがあると思います。
でも、いったい何をやっているのかは、関係者以外で知っている人はかなり少数ではないでしょうか?
ということで、今回は、タイヤテストのお話です。これを読めば、あなたもジャーナリストのようなタイヤインプレッション
ができるハズ!?
タイヤテストの目的は?
タイヤテストは、大きく分けて、2種類の目的があります。
1.選択する
ひとつ目は、次のレースにどのタイヤを選択するのかを決めるためのタイヤテストです。
GTの場合、レース開催の約一ヶ月前に、本番に備えてどのタイヤをチョイスするかを決める、タイヤ選択のタイヤテストが行われます。一ヶ月前に行う理由は、本番の路面温度と近い状態でテストできることと、このテストで決定した本番用のタイヤをメーカーが作ってくるのに必要な時間がこの一ヶ月なのです。
2.開発する
もうひとつは、クルマとのマッチングを考えて今後の方向性を決定するタイヤ開発の意味合いが強いタイヤテストがあります。
これは、新構造(タイヤの骨組みを硬くしたり軟らかくしたり)と新コンパウンド(ゴムの硬さや密度)をメインにテストします。たとえば、車両側でダウンフォースが増加すると、より高荷重に耐えるタイヤが必要とされるため、開発が必要となります。
基準となるタイヤ
そして、これらタイヤテストに必ず登場するのが、スタンダードとかベンチマークといわれる基準タイヤなんです。これは、昨年のレースで使用されたタイヤだったり、今までのタイヤの中で、一番実績を残しているタイヤだったりしますが、要は、すべてこのタイヤが基準となり、新しくテストするタイヤが、この基準タイヤに比べてどうなのかをコメントします。これら、すべてのタイヤを的確にコメントできれば、タイヤ開発はどんどん進み、レースにアドバンテージが持てるという図式です。
コメントの項目としては、
1)温まり
冷えたタイヤでスタートして、一定のグリップレベルに達するまでの早さの比較です。計測1週目から全開でいけるとか、3週目までは怖くて踏めないとか、冷えているときはアンダーが強いとか、トラクションが無いとかをコメントします。もちろん比較対象はスタンダードタイヤです。これが良いと、スタート直後の混戦でアドバンテージがあります。
2) グリップ力
これが一番重要なグリップ力の高さの比較です。ハンドルの重さや、クルマの安定感、コーナリングスピードで比較します。グリップ力の高いタイヤは、絶対、ハンドルが重くなりますので、このハンドルの重さが判断材料です。
これは、どんなタイヤにも共通で、たとえパワステが付いていても、わかるはずです。
もし、この微妙なハンドルの重さの違いがわからなければ、間違いなく、ハンドルを握る手に力が入りすぎています。
3) ステアリングレスポンス(フロント)
ハンドルを切りはじめたときに、クルマがどれぐらいのラグでレスポンスするか。また、このレスポンスは、リニアでコントロール性の高いものかを判断します。
レスポンスというと、なんだか急激な挙動をイメージすると思いますが、ここでのポイントは、レスポンスする速さとリニアさです。ステアリングレスポンスが悪いと、特に切り替えしが厳しくなります。
4) 切り足し応答(フロント)
クリッピングポイントの手前での、ステアリングの切り足しに対しての応答性の比較です。グリップ力の低いタイヤは、この部分での応答性が悪い場合がほとんどです。
5) バランス
アンダー、オーバーのバランスです。これは、コーナーの入口、真ん中近辺、出口に分けてコメントします。また真ん中近辺での挙動をコメントするときにアクセルを踏む前なのか、踏んでからなのかを付け加えることが重要です。
6) ブレーキ性能
ブレーキの止まり感、減速感の比較です。ブレーキは軽くロックするまで踏みますが、その寸前の止まり感とロックのレベル、コントロール性(ロックに対してブレーキを緩め、どれぐらい速くロックを解除できるか)が重要です
7) トラクション性能
ブレーキ同様、トラクション時のグリップ感、安心感、ホイールスピンの量を比較します。アンダーステアが強いとトラクションは良い方向に、オーバーステアが強いと悪い方向になります。
8) 耐摩耗性
実際に、レース周回数を走り(これがかなり体力的にきつい!)、グリップの落ち幅を確認します。ある意味、一番重要なテストで、新品のときは、ハイレベルなグリップでも、後半にタレ(グリップダウン)が大きいタイヤは、やはり決勝では厳しい展開になります。しかし、抜きにくい等、サーキットによっては予選順位とスタート直後のパフォーマンスが重要な場合、後半は厳しくなっても、チョイスせざるを得ないこともあります。このあたりは作戦です。
こんな感じで、タイヤテストは行われていますが、なんとなぁ〜く理解できました??
この他に、まれにコンビネーションという、前後左右で構造やコンパウンド違いを組み合わせてみることもあります。たとえば、左フロントのみの磨耗が厳しい場合、左フロントのみハード系コンパウンドのタイヤを入れたりもするのです。
しかし、こんなわがまま放題の我々の話を聞いて、どんどんタイヤのレベルを上げてきてくれる、タイヤメーカーさんには、ホント感謝です。
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