さてさて、今回もはじまりました、番外編レーシングあきんどのコーナー。
噴かないパワステフルードを開発すべく、開発テストはまだまだ続くのであった・・・・・・・・。
(今回から、読み始めた人は、Vol.18から読んで下さいね)
フリダシに戻った、開発テスト。
でも、なんでエンジン回転が上がると、パワステフルードのキャビテーションが起こるのだろう?
この答えは、とってもカンタンでした。
パワステシステムは、油圧によりステアリングの重さを軽減するため、フルードに圧力をかけなくてはなりません。
そこで、ベーンポンプという油圧ポンプが装着されているのですが、このポンプ、
クランクプーリーから直接ベルトで駆動されていて、エンジン回転に比例して回転する仕組みです。
要するに、エンジンが高回転になれば、ポンプも高回転になってしまうわけです。
当然ですが、パワステはアイドリングでも作動しなければなりませんので、低回転でもしっかり油圧をかける
必要があります。 それが、アイドリングの10倍にもおよぶ回転数のスポーツ走行になると、ポンプの回転が
上がりすぎて、キャビテーションを起こしてしまうのです。
教訓 B
ベーンポンプで発生するキャビテーションが、噴きこぼれの原因。
だったら、“高回転でもキャビテーションが起こらないパワステフルードを作れば良いじゃん”ということになり
(立ち直りはやい!)、今度は徹底的に、パワステフルードに求められる性能を把握することから、はじめました。
そこで、おもしろいことを発見したのです。
パワステフルードは、最高毎分10リットル以上も高速で循環されているのに、容量は、クルマによっても
多少異なりますが、おおよそ1.2〜1.5Lと非常に少量です。メインの仕事が、油圧油(圧力油)として圧力を伝えること
から、各メーカーともATF(オートマフルード)が新車時に注入されているのですが、ベーンポンプをはじめとする
各部の潤滑、そして、何より長時間高温状態が続くという使用環境は、かなり厳しく過酷です。
しかし、エンジンオイルをはじめとする油脂は、定期的に交換するのに、パワステフルードには、交換の習慣が
ありません。そうです、新車時に注入されたまま、劣化が進んだ状態で使用し続けているのが現状なのです。
劣化が進むと、摩擦係数、極圧性(圧力がかかった状態での潤滑性)、消泡性、せん断性 熱伝導性といった
性能が低下し、潤滑不足からくる、変な引っかかり感や、不安定な重さ、そして何より、キャビテーションが
起こりやすくなるのです。
教訓 C
パワステフルードは、かなり劣化が進んでいる。
しかし、パワステフルードを全量交換するのは、とっても手間がかかり、ちょっと現実的ではありません。
そこで、成分を濃縮し、添加剤として手軽に低下した性能を引き上げられ、なおかつ、潤滑性能の中でも、
特に極圧性の向上にポイントを置いて開発したのが、昨年夏に発売を開始した “リニアステアー”です。
極圧性とは、金属同士に圧力のかかった状態における潤滑性のことをいい、この性能が新品時以上に向上すると、
ベーンポンプ内での抵抗が減り、ステアリングフィールが驚くほど、リニアになるのです。
おまけに、極圧性の向上により、ベーンポンプで発生する気泡が大幅に減少し、スポーツ走行でのフルードの
噴き出しも、抑制することに成功したのです。
そして、数回に渡るテストにより、“これは、絶対にドラテク向上に直結する”と実感し、ネーミングも“ドラテク向上添加剤”に決めたのです。
では、次回は、なぜ“リニアステアー”で、ドラテクが向上するかをバッチリ説明しちゃいます。
次回は、開発秘話ではなく、まじめなドラテクの話しです。
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